PEEK冠 新保険適用 PEEK
PEEK冠 新保険適用 PEEK
ひと昔前までは、奥歯の被せ物というと「銀歯」が当たり前でした。銀歯は材料費が安く、加工もしやすいことから、保険診療で使う被せ物として重宝されていたのです。それが審美障害や金属アレルギーのリスクがあるなどの理由で敬遠されるようになり、白い歯の適応が増えていきました。そして今回の改定で、いよいよすべての部位に保険の白い歯が使えるようになったのです。ここではそんな新しく保険適用となった「PEEK冠」について、西白井のハーツデンタルクリニックがわかりやすく解説をします。
CAD/CAM冠との違いについて
これまでも保険診療では、前から6番目までは、白い歯で治療することが可能でした。2020年の4月の改定で、4~6番目の歯に保険が適用されたことは記憶に新しいです。これがいわゆるCAD/CAM冠であり、保険で入れられる白い歯なのです。
素材の違い
従来のCAD/CAM冠は、ハイブリッドレジンで作られているため、強い圧力が加わると、割れてしまうことがありました。一方、PEEK冠にはセラミックが含まれていないことから、従来のCAD/CAM冠よりもたわみやすく、破損しにくいという特長があります。
歯の切削量の違い
PEEK冠には、従来のCAD/CAM冠より靭性(じんせい)が高いため、破折リスクを減らすことができます。被せ物を薄く作っても壊れにくいことから、歯の切削量も従来のCAD/CAM冠より減らせるのです。かけがえのない歯質の切削量を減らせることは、歯の寿命にも直結するため、患者さんにとって極めて大きなメリットといえるでしょう。
色調の違い
従来のCAD/CAM冠とPEEK冠は、どちらも“白い歯”と表現されますが、色調に違いが見られます。PEEK冠は素材の性質上、アイボリー色を呈しているため、従来のCAD/CAM冠よりやや不自然な印象を受けることかと思います。この点はPEEK冠の欠点のひとつといえるでしょう。
適応できる部位の違い
上でも述べたように、従来のCAD/CAM冠は、前から6番目の歯までしか使うことができませんでした。7~8番目の歯を白い人工歯で補うとなると、自費診療を選択する他なかったのです。PEEK冠は7~8番目の歯まで保険で使えるようになったため、CAD/CAM冠の適応外の範囲をきれいにカバーできます。
今回の変更点のまとめ
2023年12月1日に「PEEK冠」が健康保険収載されたことで、被せ物治療は次のように変わりました。
・すべての部位に保険の白い歯を使えるようになった
・7~8番目の奥歯に適応されるのはPEEK冠(6番目も可能)
・PEEK冠と従来のCAD/CAM冠には違いがある
・PEEK冠なら金属アレルギーのリスクをゼロにできる
自由診療のセラミックはもう必要ない?
ここまでは、新しく保険適用されたPEEK冠の特徴について解説してきました。従来のCAD/CAM冠では治療できなかった7~8番目まで使えることはもちろん、しなやかで壊れにくく、歯を削る量も少なく済むのであれば、自由診療のセラミックはもう必要ないように感じる方もいらっしゃるかもしれません。その点について歯科医師の目線からいくつかお伝えしたいことがあります。
PEEK冠はあくまでプラスチック
PEEK冠が優れているのは、従来のCAD/CAM冠と比較した場合に限ります。自由診療のセラミックと比較した場合は、経済性以外で優っている面はほぼないといっても過言ではないのです。まず、色調は間違いなくセラミックが優れています。とくにオールセラミックは、患者さんそれぞれの歯の色を忠実に再現することが可能なので、アイボリー色のブロックを削り出して作るPEEK冠とは大きく異なります。
素材の安定性についても、セラミックに軍配が上がります。セラミックは経年的な摩耗や変色が起こりにくく、治療から10年経過しても美しい状態を保つのは難しくありません。一方、プラスチック製のPEEK冠は、治療から2年も経過すると変色や摩耗が進み、場合によっては寿命を迎えることもあると考えられています。
さらには、歯質との適合性もセラミックの方が優るため、PEEK冠の方が虫歯の再発リスクが大きいといえます。ですから、被せ物の審美性や機能性、耐久性などを追求したい場合は、依然としてセラミック歯を選択した方が良いといえるのです。
まとめ
このように、2023年12月1日からPEEK冠という白い被せ物が保険適用となりました。これによりすべての部位を保険の白い歯で治療できるようになったため、銀歯を選択せざるを得ないケースも少なくなることでしょう。ただし、繰り返しにはなりますがPEEK冠はあくまでプラスチックで作られた被せ物なので、自由診療のセラミックと比較すると欠点が目立ってしまいます。その点も理解した上で、奥歯の被せ物治療の素材は慎重に検討する必要があるといえるでしょう。