入れ歯(保険内)

失った歯を放置するリスク
虫歯や歯周病、外傷などが原因で歯を失った場合は、速やかに治療を受けた方が良いです。なぜなら、失った歯を治療せずに放置していると、次のようなお口の変化・トラブルを招いてしまうからです。
見た目が悪くなる

歯列内に1か所でも欠損があると、口元の審美性が大きく低下します。それがコンプレックスとなって人前で口を開けられない。自然に笑えないという悩みを持つ方も少なくありません。
そしゃく能率が低下する
私たちの歯は、親知らずを除くと全部で28本生えてきます。上顎の14本と下顎の14本がそれぞれ適切な位置で噛み合うことで、正常なそしゃく機能を発揮します。その中の1本でも失うことがあれば、そしゃく能率は大きく低下します。前歯がなくなれば食べ物を噛み切ることが難しくなり、奥歯の場合は食べ物をすりつぶす機能が著しく減少することでしょう。
残った歯の寿命が縮まる
失った歯の機能は、残った歯で補うことになります。それがそしゃく機能の主体となる大臼歯であった場合は、残った歯への影響は深刻です。噛んだ時の力を残った歯で支えなければならないため、歯冠や歯根の破折リスクが高まります。残存歯の摩耗も起こりやすくなることでしょう。
歯並びが悪くなる
歯の喪失によって生じたすき間は、周りの歯によって徐々に埋められていきます。欠損部の両隣の歯は、すき間に向かって倒れ込んできます。喪失歯と噛み合っていた歯は、すき間に向かって伸びてきます。その結果、全体の歯並びが乱れ、噛み合わせまで変化してしまうのです。これはお口全体の機能を低下させることにもつながる深刻な変化です。
発音が悪くなる
私たちの歯は、発音機能にも関係しています。すきっ歯の人は、息漏れによって発音が悪くなることがありますが、抜けた歯をそのままにしておくことでも同様の影響が現れます。とりわけ、すべての歯を失った人は、発音障害が顕著に現れます。総入れ歯を装着することで、そうした症状はきれいに改善できます。

入れ歯はすべてのケースに適応できる治療法
入れ歯は、適応範囲の広い装置です。1本の歯を失ったケースから、すべての歯を失ったケースまで、幅広く適応できます。この点は顎の骨に人工歯根を埋め込むインプラントと同じです。また、保険診療の入れ歯であれば、比較的安い費用で失った歯を補えるため、治療を受けずに放置されている方は検討されてみてください。治療期間もそれほど長くはありません。保険診療の入れ歯を装着することで、失った歯を放置するリスクの大半は回避できます。

入れ歯の種類
入れ歯は、部分入れ歯と総入れ歯の2種類に大きく分けられます。これらは患者さんが自由に選べるものではなく、失った歯の本数や状態によって自ずと決まります。
部分入れ歯
部分入れ歯は、1~複数本の歯を失った場合に適応される装置です。「人工歯」と歯茎を覆う部分である「義歯床(ぎししょう)」、残った歯に引っ掛ける「クラスプ」という3つのパーツから構成されます。クラスプは金属で作られたフックのようなパーツで、目立ちやすいのが難点です。部分入れ歯は設計のバリエーションが極めて豊富な装置であり、すべての歯を失ったケース以外であれば、適応可能となっています。
総入れ歯
総入れ歯は、すべての歯を失った場合に適応される装置です。「人工歯」と歯茎を覆う部分である「義歯床(ぎししょう)」のみで構成され、部分入れ歯に付随するクラスプは存在していません。お口の中への固定は、義歯床の吸着力によって成されます。保険治療の総入れ歯は、人工歯も義歯床も歯科用プラスチックであるレジンで作られます。

入れ歯に伴うトラブルについて
入れ歯は、ブリッジやインプラントと比較すると、トラブルが多い装置といえます。それは入れ歯が固定式ではなく、着脱式の装置だからです。そのため次に挙げるような症状・トラブルに悩まされることが多いです。
入れ歯がずれる・外れる
入れ歯は、食事や会話の際にずれたり、外れたりすることがあります。これは着脱式の装置において避けては通れないトラブルですが、あまりにも頻繁に起こるようであれば、調整が必要です。入れ歯の形や設計が不適切で、患者さんのお口の形に合っていない場合は、装着感・使用感も悪くなります。
装置が目立つ
入れ歯は、ブリッジやインプラントよりも装置が大きいです。保険治療の部分入れ歯に関しては、ギラギラと光を反射する金属製のクラスプが付随することから、装置が目立ちやすくなっています。総入れ歯も口元の違和感を完全に取り除くことは難しいです。

快適な入れ歯を希望される方へ
入れ歯は、保険診療だけではなく、自費診療でも作ることができます。自費診療の入れ歯では、審美性や機能性、耐久性などを追求できるため、保険治療の入れ歯に伴うトラブルを回避しやすくなります。当院でもさまざまな総入れ歯・部分入れ歯(自費)に対応しておりますので、より快適な入れ歯を希望される方は、お気軽にご相談ください。自費診療の入れ歯のラインナップは、「総入れ歯・部分入れ歯(自費)」のページでご確認いただけます。

入れ歯は保険と自費で何が違う?
保険診療の入れ歯でも、失った歯の審美性や機能性はある程度、回復することができます。ただし、それは必要最低限の結果しか得られないような仕組みになっているのが現在の医療保険です。保険診療の入れ歯では、審美性や機能性がそれほど高くはなく、経年的な劣化も起こりやすい「レジン」しか使えません。そのため耐久性を確保する目的で入れ歯を厚く、大きく作らなければならないのです。また、部分入れ歯ではクラスプも必須となっており、見た目や装着感にも大きな影響が及びます。
自費診療の入れ歯では、使用する材料に制限がかかりません。義歯床にチタンを使った「チタン義歯」は、強度があるため薄く、軽く作ることができます。チタンは金属アレルギーのリスクが極めて低い素材であることから、身体にも優しい入れ歯といえます。その他、生体用シリコンを使った「コンフォートデンチャー」や金属製のクラスプがない「ナチュラルデンチャー」など、快適性を追求した入れ歯もあります。
入れ歯は、歯が持つ機能を代替する重要な装置であり、人工臓器の一種と言っても過言ではありません。そのため、より良いものを求めることは、全身の健康維持・増進にも寄与するといえるでしょう。